ヨガインストラクターの Emi です。こんにちは。
今回は、最近読んだ本をご紹介します。
「ヨガ・ボディ ポーズ練習の起源」マーク・シングルトン著 大隅書店
一般的に「ヨガ」というと、体を動かして、ポーズを行う、呼吸法や瞑想、という感じで捉えられていると思います。
現在日本で行われているヨガは、欧米経由で伝えられているものも多く、欧米も日本も、身体練習中心のヨガが広く普及しています。
私もはじめは体を動かすことを中心にしていました。
体を使って練習を続けていくと、体の様々な不調が改善されたり、なぜか精神的に落ち着くようになったりと、練習の成果や効果がわかりやすく実感できるので、体からヨガの世界に夢中になっていきますよね。
その後、ポーズはもちろん、アーユルヴェーダ、占星術、マントラやサンスクリット語、哲学、呼吸法、瞑想、聖典の勉強などなど、ヨガの世界には、様々な分野で莫大な知識がもたらされていることを知りました。
私も含めヨガが好きな方は、興味がある分野の勉強や練習を継続して深めるようになります。
私はその中でも、ヴェーダーンタという聖典の勉強やサンスクリット語の勉強を始めました。
その中で伝えられることには、体に関することはほとんどありません。
瞑想の時の座る姿勢について解説されているくらいです。
学んでいくうちに、私が続けている身体練習中心のヨガ(いわゆる「ハタヨガ」)との違いを感じ、「ハタヨガ」はどういう経緯で広く普及したのだろうかと疑問を持つようになりました。
そんな時に、ふと目についたのが「ヨガ・ボディ ポーズ練習の起源」という本です。
この本によると、中世のハタヨガでさえ、身体ポーズ中心であったという確証はなく、1800年代後半では、身体ポーズ中心のハタヨガは、苦行者や大道芸人等と一緒に捉えられていて、良いイメージを持たれていなかったそうです。
そのため、当時のヨガ指導者たちもハタヨガを扱わず、排除していたところがあったのだとか。
そのような扱いだったハタヨガが、なぜ現在、これほどまでに普及したのか、丁寧な調査と分析によって明らかになっています。
当時は植民地時代で、予想以上に欧米からの影響が大きかったことをあらためて知りました。19世紀末ヨーロッパでは、「国民の身体を鍛えて国力を上げよう」とする身体文化が発展しました。
その頃に最初の近代オリンピックが開催され、インドでは身体ポーズが注目されるようになった、インドのYMCAの影響、軍事訓練の中の身体鍛錬としてヨガのポーズが練習されていた、など興味深いお話がたくさんあります。
20世紀初めの約10年は、インド各地の土着身体文化を発展させつつ、欧米の身体文化と融合させる実験的な試みが活発に行われていたそうです。
当時の欧米の体操とヨガのポーズの共通点があること、ボディビルディングの影響も受けていたことは意外でした。
その後、現代のハタヨガの基盤が作られたのが1920〜30年代だそうです。
この時代の流れや背景を知った上で、近代ヨガの父と言われるT・クリシュナマチャルヤとその弟子達の物語を読み、現在に至る近代ヨガの流れがわかりました。
T・クリシュナマチャルヤとその弟子達が自身のヨガシステムを確立して広めていった過程も、その時代に求められていたことにあわせていたようです。
だからこそ普及したと思います。
ちなみに、T・クリシュナマチャルヤがマイソール時代(1930年代初め〜1950年代初め)に行っていたのは、エアロビックな動きを中心にした、連続したポーズのシステムでした。
それを発展させたのが、パタビ・ジョイスであり、「アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガ」の源流です。
そこから派生したシステムが、現在も生まれています。
「五千年の歴史がある」と言われている(もっと古いという説もあります)ヨガに対して、古代からの教えや行法がそのまま変わらずに、先生から生徒へ脈々と受け継がれてきたもの、という印象があったのですが、それだけではありません。
時代時代によって、他の文化や人々の影響を受けて発展していったものだったのです。
これからもハタヨガは、人々の要望や時代にあわせて発展していくのでしょう。
その一方で、古代からの聖典などは変わらずに引き継がれていきます。
この伝統と発展が、ヨガの興味深いところだと思います。
そしてこの本の著者は欧米人ですが、インドの文化の中で生まれ育ったハタヨガの先生なら、どのようにハタヨガの歴史を語るのだろうか、というのも興味が出てきました。
近代ハタヨガの背景について興味のある方は、ぜひ読んで頂きたいと思います。
「ヨガ・ボディ ポーズ練習の起源」
マーク・シングルトン著 大隅書店
Emi